フランチャイズとは?
あちこちで引用されていますが、日本のフランチャイズについては『社団法人日本フランチャイズ協会』の定義が最も一般的です。
『フランチャイズとは、事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え、一方、フランチャイジーはその見返りとして一定の対価を支払い、事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係をいう。』
なんだか少しわかりにくいかもしれませんが、いろんな要素を絡めて説明しようとすると、以上のような感じになるんだと思います。
ものすごく噛み砕いて言うと、
『チェーン本部の看板やらノウハウやらを有料で借りて商売する形のビジネス』
という感じでしょうか。
フランチャイズに加盟すれば、扱う商品やその商品の入手ルート、コンビニの場合で言えば店舗や業務備品まで本部が用意してくれていますし、商品の仕入れ方、売り方、接客や営業の仕方、人材教育の仕方、その他運営実務全般のアドバイスなり助言なりを受けることができます。
例えば、自力開業で商売を始めようとすれば、
資金を銀行とか国民金融公庫から調達し、
出店場所を調査し、
出店交渉をし、
物件の賃貸契約を取り交わし、
内装、外装のデザインを考え、
内装、外装の業者を探して発注し、
備品等を買い揃え、
商品の物流体制を整え、
人を募集・面接・教育し、
集客方法を考え、実践し、
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と、いろんな手間がかかってきます。
そして、それら一つ一つに大なり小なり費用がかかってくるのです。
つまりものすごく大変です。
一方、フランチャイズだと、一旦加盟する本部を決めてしまえば、資金調達と人の手配と教育、そしてその後の運営実務をメインにすればOKです。
最初に加盟金を支払い、開業後はロイヤリティを支払っていくことで、その商売の本質的な部分(=集客し、顧客満足度を高めるいろいろな工夫を考え実践すること)に集中することができるのです。
これは大きなメリットです。
売上を上げることにより多くの時間を割き、集中できる・・・完全自力で起業した起業家の方から見れば、ある意味、羨ましい環境であるはずです。
ある程度の雑用は本部の方でこなしてくれているのですから。
(店にいるとなかなか見えてきませんが・・・。)
しかし、別の側面もあります。
それは、『本部に手足を縛られる』という側面です。
これは望むと望まざるとに係わらず、多少の差はあれ、フランチャイズで起業した以上は必ずつきまとってくることです。
以前、マネーの虎で有名になった、堀之内 九一郎社長の『生活創庫』の加盟説明会に出向いた際、堀之内社長は、
「ローソンやサークルKなどのコンビニ本部は、店頭のマット一枚にいたるまで本部経由で管理しようとしていると聞いたことがある。何を考えているのかと思う。そんなとこまで首を突っ込んだら加盟店の活気をそぐことになるということに気付かないのか?」
というようなことを言われていました。
的を得た指摘だと思います。
フランチャイズは数多くあり、フランチャイズの仕組みも業界により、またチェーンによって相当差があります。
例えば、コンビニの場合。
- オンラインにより、販売データはその日のうちに本部にて参照可能です。
注目商品、重点商品の販売実績が芳しくない場合は、即店舗に出向いて状況チェックというようなことが可能です。 - 店舗に入るものは商品一個、備品一個、スタッフ一人にいたるまで、ほぼ全てが本部にて把握可能です。
- 日々の売上は毎日本部口座に送金しないといけません。
送金を忘れると遅延金というペナルティを課されます。 - 売場のレイアウトを本部の許可なく変更してはいけません。
(=おおまかな括りを変えてはいけない) - 本部推奨の取引先以外からの商品仕入れは事前の本部許可を要します。
- チェーンの名称、個店名、商標、トレードマークなどをネット上で使用してはいけません。
- 店舗以外の場所でチェーン名称を名乗って営業活動などをしてはいけません。
- 店舗に新たな設備を設置したり、何らかの工事をすることは、本部許可を要します
- 本部発行の経営資料上で、自己資本金が本部指定の額を下回ってはいけません。
- 毎日24時間営業をしなければいけません。
- ユニフォームや名札、店内BGMに至るまで、本部指定のものを使用しなければなりません。
- 掛売りは原則禁止です。
- 店独自の折込チラシその他の広告宣伝は、本部にその都度報告しないといけません。
また、上記事項の中には本部が加盟店を牽制する目的で契約書に書いていることもあります。
例えば、数年前、私が担当していた加盟店から、
「契約書には、『契約終了後も○年間はコンビニを経営してはならない。』というような条項があるが、それは憲法が保証している『職業選択の自由』に反しているのではないか?」
という問合せを受けたことがあります。
早速本部の法律関係の担当者に問い合わせたところ、
「その条項が憲法違反かどうかはわからない。本部は顧問弁護士と相談の上、憲法違反には当たらないと思って条項に入れている。が、その判断ができるのは裁判官だけ。なので、その条項を争点とした裁判の事例が出てこないとなんともいえない。」
「ただし、加盟オーナーが当チェーンをやめて他チェーンのコンビニ経営を始めたとしても、うちとしてはそれを問題にして裁判を起こすようなことはしない。」
「つまり、牽制の意味合いが強いと思ってもらえればよい。」
「他にも牽制目的の条項はある。」
との回答でした。
「ナニそれ!?」
と思いましたが、独占禁止法に触れるかどうかなど、際どい条項が入っているのは確かだと思います。
一方、例えば外食のフランチャイズやサービス業界のフランチャイズなどは、チェーンイメージの維持・向上には注意をしていても、売上の毎日送金なんてしているところはないと思います。
「売上の中から、月ごとのロイヤリティだけ送ってね。」
という感じのところが圧倒的に多いのではないでしょうか?
フランチャイズ加盟は諸刃の剣です。
起業のリスクを大幅に軽減するとともに、起業の旨みも大幅に減少させてしまいます。
加盟時には、自分でできるだけデータを集め、データの向こうに見えてくる現実が想像できるくらいでないといけません。
私は、自分の独立のためにいろんなFC本部の方とお会いしましたが、「よし!」と思えるFCは何十社も回ってたったの1社でした(自己都合で加盟には至りませんでしたが・・・)。
自分の価値観に合ったFCなんて、そうざらにあるもんじゃありません。
価値観に合ってないと、加盟後の不満も加速度的に溜まっていき、いつかは事業意欲を失ってしまいます。
そうならないためにも、フランチャイズの加盟はじっくりと検討したいものです。